飯豊連峰
筆塚尾根(仮称)〜裏川烏帽子山〜檜山烏帽子岳〜クサイグラ尾根〜飯豊山荘

2006年12月29日〜 2007年1月3日
宮内幸男・遠藤淳・畠山健一
記録=畠山健一

 Eternal snow 降り止まぬ雪。この年も寡雪が噂され1000mそこそこの藪尾根のアップダウンが想定される筆塚尾根はどうなることかと不安はあった。ところが入山の前日から突然降り出し、結局年内の5日間止むことがなく降り続け、烏帽子山への少し長いアプローチとしか考えていなかった筆塚尾根が今ルートの核心となるとは思いもしなかった。
 前川と裏川が合わさるそこに小荒ダムはある。夏の遡行を楽しむ者にはいささか趣きを欠く構造物ではあるが立場を替えて土木技師から見ると水量の少ないこの時期でも白い飛沫を上げるこの川にこれだけのコンクリート構造物を作ったことには頭が下がる。さて、取付きはダムを渡り、急な草付から始まる、偵察に来ているので迷うことはない。まだ降り出したばかりの雪と藪に思いのほか進まず、ソソギ山先のコルで1日目の行動は終わった。
 翌日、さらに強く降り続く雪とロープを2回も出す藪リッジに我々の行動も一向に捗らず、1067mの筆塚山の山頂で泊まる、このままでは敗退かも知れないと空気も沈み、人知れぬ低山に苦しめられる由を考える。3日目、尾根上は藪が立っており?長走川側をトラバースする。この辺ももっと雪がつけばさらに厳しくなると想像され、ノーマークだった低山にもまだまだ面白い処があるんだと教えてもらった。木おろしを過ぎるころより中木からブナなどの高木林に変わり、降り続いた雪に空身ラッセルを強いられることとなる、引上げの手前は尾根の形状がない雪壁を腰までのラッセルに緊張する。タアバナの手前で3泊目の幕場を作る頃より天候の回復の兆しが見えてきた、そしてこの年も終わろうとしていた。
 年明けは快晴で迎えられた。いよいよ高度も上がってきて(といっても1500m前後ではある)、やがて三角錐の烏帽子山南峰が見えた。凛とした山容にいままでの苦労も飛ぶ。かつてそれほど多くの人に見られたことのない姿だ。瀧島さんも来たかったよなとぼそりと呟く。そして冷たい青空の下、南峰に立つ。南峰は実にかっこいい、また真っ黒な岩稜を持っているがさすがにここまで登りに来る人はいないだろう。
 感慨に浸っていたいところではあるがこの先の主稜線に泊まり場は期待できない、御西小屋まで行かなくてはならずのんびりしていられなかった。好天も続かず、薬師岳辺りよりガスが出てきた、またこの頃より疲れも出てきて、大日岳では身体を風上側に傾斜させるとバランスが保てるような強風の中通過、11時間の行動で御西小屋に転がり込んだ。
 5日目、北へ主稜線を行く。時々ガスで視界を見失い、雪庇紐を投げたりしながら進み、檜山烏帽子山からクサイグラ尾根は先行者の旗竿に導かれて降りることができた。温身平の飯豊山荘の軒下に最後のテントを張り、6日目、少し遅い出発で長者原へ下った。

写真上から
浦川烏帽子山へのラッセル
浦川烏帽子山南峰より北峰へ
浦川烏帽子山南峰でポーズ


〈コースタイム〉
12月29日 小荒8:00 〜小荒ダム8:45 〜ソソギ山12:30 〜コル15:00
12月30日 7:30発〜筆塚山15:30
12月31日 6:50発〜引上ゲ15:00
1月1日 6:00発〜烏帽子山9:00 〜実川山13:30 〜大日岳15:40 〜御西小屋17:00
1月2日 6:45発〜烏帽子岳9:30 〜温身平14:45 〜飯豊山荘15:45
1月3日 7:30発〜長者原9:20

 

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