春の集中〈逍遥隊〉
奥鬼怒・実川硫黄沢右俣〜ちっちゃな湿原〜黒岩山
2007年6月9日〜10日
L.熊倉 彰、渕上麻衣子
記録=渕上麻衣子

6月9日
わたしたちがいる福島県側は青空だというのに、徹さんたちがいる栃木県側は大雨に濁流だという。こんなにも違うものなんだ。電話でこちらは入渓することを伝え実川の林導へ車を走らせる。矢櫃沢の出合にかかる橋で充実隊の3人と別れ、わたしたちはそこから10分ほど林道を進むと広々とした駐車スペースがあったので、ここから歩き始めることとした。
森をかき分け沢へ降り立つと昨日の雨でだいぶ増水をしている。対岸に道があるため渡渉をして道をたどることとした。雨でしっとりとしたブナ林はとてもいい雰囲気。ここの道はどこまで続くのか……。だいぶ本流からは離れてしまったが、沢がちょうどよく横切っていたのでこれ(黒溶沢)を下降して本流へ降りた。下降途中でウド入手。しばらく遡行をすると滝が出てきたので、右岸に付けられた踏み跡を辿り高巻く。上から眺めるとずいぶんと立派な滝で4段(多分)の滝であった。途中ドロドロ草付きのトラバースがありひやひやする場面あり。赤安沢の手前に巻き降りる。
そのころには雨は本降りで全身ずぶぬれ。その後周囲には森が広がり河原が続くが、とにかく水量が多いのでただ河原を歩くだけでもたいへんだ。2条3mの滝は真ん中の岩を登り越え、3m滝は左岸を巻くと、両岸が少し立ってきてゴルジュっぽくなってきた。まあ普段はたいしたことないであろうゴルジュもたいしたゴルジュになってしまい、大水量の中お腹までつかりロープまでだしてがんばってしまった。「逍遥隊のはずなのにこれじや充実隊だ」と二人してぼやく。ここを過ぎると普段はきっと美しいであろうナメになる。
また滝が出てきたので右岸を巻くため登り始めると、先を行く熊倉さんがなにか叫んでいる。そこまで追いつくとなんと林道が続いていた。わたしたちが今朝車を走らせた林道がここまで続いているのか?赤倉沢の屈曲点の手前で道は終わっていたが沢へは降りずにそのまま巻き続けた。結構大変だったので、赤倉沢3つの沢の2本目で沢へ降りて対岸の急斜面を木登りで登り尾根上へ出て、そこからは緩やかな森の中を下り(ここでコシアブラを入手。やった!)、赤倉沢の先の緩やかなところへ降りた。そこまでは、水量多く、巻き多く、そしてとにかく寒いので疲れきっていたが、降り立った場所は薄日が差し、新緑キラキラ、流れは穏やかで平和な光景だった。頑張ったご褒美だね、とまだ終わってもいないのに顔は緩みっぱなしである。ここに赤布をつけ先へ。
二俣にも赤布を付けて右俣へ入ってから幕を張った。熊倉さんの提案で焚き火の場所にも雨よけのフライを張ったため、雨にもかかわらず焚き火を囲んで至福のときを過ごすことができた。夜ごはんは熊倉さんの美味しい料理をいただき、天ぷらもできたし、最高に贅沢な集中の夜だった。

6月10日
凍えるような冷たい水のなかを出発。とにかく寒いので黙々と歩いていく。7m滝を少し戻った左岸急傾斜のボロボロから巻き、その後最後の二俣を(左俣へ)分けると、次第に傾斜が緩くなり薮でぼさぼさしてくる。8時の交信では徹さんパーティ以外とは交信がとれ、充実隊も花沼湿原の近くにいることがわかった。
交信を終え、20分ほど歩くと、笹薮の向こうに湿原がば−っと開けた。薮に囲まれた湿原や沼に出会ったときの気持ちはほんとにいいものだ。宝物を発見したようななんとも言えない喜びに満たされる.霧の中に真っ白な水芭蕉が咲き乱れる湿原は幻想的で美しく、花沼湿原だと思い込んだわたしたちは係の指令通り写真を撮ったあと、のりちやんたちがきっと来るであろう方向に向かってコールを送ったりしていた。しばらく待っても来ないようなのでコンパスを合わせて先へ進むことにした。予定ではしばらく行くと尾根が急になり道に出るはずなのに、平らな森から一向にでることができない。そこで地図を再度確認し、さっきのは花沼湿原の手前のちっちやな湿原だったことが分かりがっくり。でも、とても素敵だったから、と気を取り直し道の方向めがけて薮を迷走していると遠くからコールが聞こえ、すでに道にでていた充実隊と合流した。
9時の交信では変隊と交信がとれたが、徹さんパーティとは相変わらずとれない。黒岩山への分岐で変隊とも合流でき、空身で黒岩山を往復。天気も悪いし、全パーティ登山道で下山をすることにし、徹さんたちと連絡がとれないのは心配だが、降りたら連絡しあうことを約束し下山を開始した。
途中、尾瀬の小淵沢湿原と大江湿原を通りやっぱり尾瀬は美しい場所だと改めて思った。熊倉さんは小淵沢湿原にはずいぶん前に来たことがあるそうで懐かしがっていた。沼山峠では七入まで直通のバスに乗ることができ、着いた七入では徹さんにも連絡が取れみんな無事ということで一安心した。
係りの徹さん本当にお疲れさまでした。逍遥隊のルートには大満足。また、この山域の湿原めぐりをしてみたいと思いました。
〈コースタイム〉
6月9日 矢植沢の先9:15−本流10:10一赤安沢出合10:30−山犬田代への支流出合12:00−BP(二俣の先)16:00
6月10日 出発6:30−上部二俣7:40−登山道9:30−黒岩山往復10:30〜11:30一沼山峠16:00

 


奥鬼怒らしい情感あふれる森

 


いちおうそれなりに滝もありました

 


すっかり花沼湿原と間違えたひとつ下の湿原

 


寒くてがたがた震えていたけど、
ごきげんなマイコ