越後・井戸尾根〜巻機山〜牛ケ岳〜ブサノ裏沢源頭滑降〜巻機山〜
米子沢滑降(山スキー)

2008年3月8〜9日
L.矢本和彦・遠藤徹・渕上麻衣子・矢本典子
記録=矢本和彦

 三芳PAで待ち合わせ、マイセンのカツを食べて出発する。ETC割引を受けて塩沢ICを降り、大沢駅でステーションビバークとする。この夜、徹さんと麻衣ちゃんは2時半まで語り合っていたそうだ。

3月8日

 朝起きると、車の屋根に5pほど雪が積もっていた。朝食を食べて出発し、清水へと向かう。車は集落の奥の方の路上に2台停まっていたので、その前後に停めさせてもらう。
 天気はあまり良くなく、雪だった。7時過ぎに歩き出し、民家の脇から2mはあろう雪壁に取り付いてよじ登り、スキーをつける。途中の別荘地帯までは新しいスキーのトレースがあり、それをたどる。トレースが終わると足首までのラッセルとなり、林道を抜けて橋を渡り、駐車場に至る。本当は駐車場から行けばよかったのだろうが、勢いで林道を進み過ぎて堰堤を一つ上がったところから尾根に取り付いた。なだらかな尾根を少し登ると、徐々に急になり井戸の壁となる。ラッセルを交代しながら左側の傾斜がわずかに緩いところから急な斜面を越えた。
 井戸の壁を越えると、またしばらくなだらかで広い尾根となる。ホワイトアウトでどっちに進むかやや悩ましいような感じだった。やがて傾斜が少しずつ急になり、ニセ巻の下に近づいたのが分かる。このあたりで足元の雪面が「バスッ」と音を立て、横に亀裂が入った。さほどの傾斜ではなかったことや、亀裂から上部は雪面が凍ってガッチリしていたので、気にせずにそのまま登高を続けた。やがて風が吹き抜けるところが20〜30mくらいカリカリに凍っていたのでスキーアイゼンを付け、慎重に通過する。その後も雪面はしばらく硬かったが傾斜が緩んだので不安は感じられなかった。
 ニセ巻のピークの標識を過ぎると下りに入るが、この辺りは視界が非常に悪く、雪面が見えずに、歩くのに難渋させられた。私は、歩きながら下っていたところで、いきなり自分のいる斜面が全体的にずれている気がして、足元を取られて転んで「わー、雪崩だ!」と叫んで必死にもがいたが、単なる錯覚だった。一人で雪の上でもがいていた。
 鞍部に下りて小屋を探すが、まったく小屋の姿は見えなかった。この日はブサノ裏の源頭を滑降して、途中でテントを張る予定だったが、山頂付近の視界も悪く、登っても降りられないと思われたので、天候回復をしばらく待つことにする。そして、14時まで待って天気が回復しない場合は、この周辺にテントを張ることにした。
 行動食を口にして少し休むと、徹さんがゾンデで小屋を見つけようと動き出した。それらしいところでゾンデを刺すと1.5m位の深さのところでコツンと屋根に当たった。そうなると、次は掘ってみようかということになり、屋根の際をめがけて四人で掘り進むことにした。そうこうしているうちに14時を過ぎたが、依然、山頂付近は強風でガスがかかっていた。こげ茶色の屋根が出て、その脇を掘り進むと、丁度、軒下の空間に到達し、ゴボッと穴があいた。穴のあいたところは、冬季入口がある面ではなかった。板の囲いがある窓が二か所にあり、最初、右側の窓の板を外したが、窓には鍵がかけられていて開かなかった。左側の窓は囲いの板が凍っていて外れず、最初、あきらめた。しかし、典ちゃんが、ヘッドランプをつけて再チャレンジし、見事に外すことに成功。すると、そこの窓の鍵は開いていて、小屋に入ることができたのであった。よかった、よかった、こうして快適な一夜が我々にもたらされた。
夕暮れになるとだいぶ天気は回復し、風はおさまり、夜には完全に回復して素晴らしい星空となった。

photo : 上・井戸尾根のラッセル/下・小屋の入口を掘り当てた

3月9日

 4・5・6で起床、朝食、出発した。素晴らしい夜明けだ。徹さんは先頭を歩き、麻衣ちゃん、典ちゃんは写真を撮り合っている。巻機山の頂上に着くと、360度の展望が広がり雲ひとつない晴天の下、白い山々が神々しい。荷物を置いて、牛ケ岳まで行き、ブサノ裏沢の源頭を滑る。みんな歓声を上げながら、思い思いのシュプールを刻み、笑顔で一杯だ。源頭の広々としたところを滑り、シールで登り返して、再び巻機の山頂に戻る。満面の笑みだ。



 
 
次は、メインイベントの米子沢滑降だ。徹さんが先頭で、陽の光を一杯に浴び、米子沢源頭を滑っていく。麻衣ちゃんも、今年はゲレンデを頑張った甲斐あって、転ばずに何とか付いてくる。やがて次第に傾斜が強くなっていくが、25度から部分的に30度くらいで、まったく問題ない。滝も出ていないし、雪も安定している。徹さんとは、規則正しい綺麗なシュプールを刻み、快適に滑っている。もちろん、麻衣ちゃんも頑張っている。
 右岸に陽が当たり、小規模の表層雪崩が断続的に起こり始めた。しかし、沢は広いし、左岸側の日陰の斜面を滑って行ける。「腿が、腿が…」といいながらも滑り続けると、あっという間に下の樹林に着いてしまった。ここで大休止。
 堰堤地帯になり左岸の緩い尾根に乗り、やがて林道へと導かれる。あとはトレースを追ってどんどん下って行くと、昼前に清水の集落に到着した。
 米子沢は、登りも適度で、下りも快適。徹さんも「これはハイグレード山スキーに加えてもいいような、好ルートだ」とご満悦。もちろん条件次第だが、井戸尾根を滑るなら、米子沢の方が、お勧めだと思う。
 こんなに楽しい山スキー向きの沢だけど、わらじにいながら麻衣ちゃんもも遡行経験がなく、に至っては初めて巻機の山頂に立ったそうだ。今度は米子沢を遡行して欲しいものだ。

photo : 上2枚=巻機山へ向かう/下2枚=米子沢へ滑り込む

〈コースタイム〉
3月8日 清水7:10〜井戸尾根〜避難小屋13:00
3月9日 6:05〜巻機山6:35〜牛ケ岳〜ブサノ裏沢源頭滑降〜巻機山8:35〜米子沢滑降〜清水10:45