川内・早出川今早出沢(ガンガラシバナ右方ルンゼ大滝)

2008年7月19日〜21日 
L.矢本和彦・大津政雄・岡村一彦・矢本典子
記録=矢本和彦

 私たちの登ったスラブ状の大滝は、関東周辺の沢では「ガンガラシバナ右方ルンゼ(仮称)」と紹介されている。この明るく開けた大滝に、もっとふさわしい呼び名はないだろうか。右方ルンゼというよりは、今早出沢右俣スラブ大滝という感じではないだろうか。威圧的なガンガラシバナが従えるすり鉢状のスラブに流れる一条の流れは実に見事だ。それに比べ、本流にあたる魚返しの滝は対照的に緑が多いが、若干地味なイメージとなる。

7月19日

 一ノ俣越は、橋のところにある踏み跡から草を分けるように登りだし、杉林を抜け、かすかな踏み跡を頼りに歩くが、草が覆っていて分かりづらい。今シーズン、まだあまり人が入っていないのだろうか。何度も道を見失いながら進む。踏み跡はおおむね右岸側に付けられているようだ。一旦、沢に降りて、右俣に入り、左岸の踏み跡を少したどり、また右岸に渡りかえして、今度は沢から離れて高度を稼ぐ。やがて大滝が右手に見え、大岩の基部をトラバースして大滝の落口に至る。そこから沢沿いに100m位行くと左岸にザックを置いて休めるような小さなスペースがある。そこで、右岸から少し大きなルンゼが2本入っている。その下流側のルンゼに入る。しかし、目印らしい目印はなく、小さなスペースの枝に白いビニールテープや古いシュリンゲが付けられているが、知らないとまずわからないだろう。私たちも案の定、見逃してしばらく進んでから適当に右岸のルンゼを登ったが、一ノ俣越より少し上部に出てしまった。綾線上には踏み跡があり、それをたどって少し降りると、一ノ俣越の顕著な踏み跡が現れた。峠を越えて顕著な踏み跡を降りると、赤ッパ沢に降り、踏み跡は消えて、今早出沢へはナメとなって合わさる。
 出合で休んでいると、名古屋ACCの浅野さんら四人パーティも降りてきた。割岩沢曲沢に行くという。
 本日の行動は、今早出沢の上部の二俣までだ。単調な河原を進む。横滝は下部は左岸から、上部は右岸のカンテを登った。横滝の上から大津さんが竿を出しながら進む。私と典ちゃんは餌係だ。大津さんは、幕場までの間に4匹を釣ったが、2匹は小さかったので放した。幕場に着いて少し経って、薄暗くなってから竿を出すと、さらに1匹がかかった。晩の貴重なおかずとなった。岡村さんは、ガンガラシバナの右方ルンゼの大滝を10年前にも登っていて、久々の再訪に感激した様子で写真を撮りまくっていた。幕場には虫もおらず、快適な焚火を楽しんだ。

photo : 今早出沢

7月20日

 右方ルンゼに入り、大滝の下に近づくと雪渓の状態から右岸からしか取り付けないことがわかった。岡村さんらは10年前は左岸のスラブを登ったそうだが、今回は右岸から登ることになった。遠目で見て、雪渓の上部にある滝の落口が急そうなのが気になった。雪渓から右岸の草付きに取り付き、念のためロープ2ピッチで滝の落口に至る。心配していた取り付きは、近づくとブッシュもあり、ホールドも豊富であることが分かった。ロープが5m長い関係から、矢本トップで岩に取り付いた。
 今回のシステムは、四人でロープ2本ということで、二人・二人で登ることにした。なので非常にスピーディーに登っていける。1ピッチ目、短めに切って下を見ると四人組の姿が見えた。同じく大滝を登るようだ。2ピッチ目は緩いスラブ。3ピッチ目は岩が濡れていて左のブッシュを伝う。4ピッチ目、ハングした岩を右から巻き気味に上がる。5ピッチ目、やや核心の様相となりスラブの途中でハーケンを打ってピッチを切る。岡村さんは右のクーロワール状からうまくブッシュを見つけてピッチを切っている。最後、6ピッチ目、3級程度の快適なスラブを典ちゃんリードでロープを伸ばす。フリクションで登り、大滝の落口にあるブッシュで確保。私は、トップで登ってきた大津さんと並んで登る。典ちゃんに二人が並んでいるところを記念撮影してもらう。素晴らしい高度感だ。
 終了点でラバーソールからカエルに履き替え、少し沢を登る。ゴルジュ状に雪渓が断続する。どこまで登るか悩ましかったが、最後まで登れるわけでもなさそうだ。適当なところで現れたルンゼに入ってつめ、藪をトラバースして大滝の左岸の尾根に入って下降する。結局、ロープを使うことなく、うまくブッシュを拾って下まで降りれた。登った大滝を眺めつつ、ちょっとスリリングな急な岩稜を楽しんだ。出合の雪渓へと降り立ち、いやはや、満足、満足でした。 
 この日は、赤ッパ沢の出合にある広い幕場で泊まる。時間があったので、私は割岩沢の出合まで往復しに行った。典ちゃんも行ったのだが、予想外に長くて、途中で休んで待っていた。
 夜、寝ていると、いきなり大雨が降りだしてフライを大きな雨音が叩いたが、夜明けには止んでくれた。

photo : 上の2枚・ガンガラシバナ右方ルンゼを見上げる/下の3枚・右方ルンゼの登攀

7月21日

 一ノ俣越を下っていると、瀬畑雄三さんらが登ってきた。総勢10人を超える人達が今早出沢に集まるようだ。不快なジメジメした藪の中をかき分けて、大汗をかきながら林道に戻った。3日間とも曇りベースで、炎天下とならなかったのはよかった。早目の下山に心配となった御神楽温泉の入浴時間は、休日は9時からだった。

<コースタイム>
7月19日 一ノ俣沢橋6:30〜一ノ俣越〜赤ッパ沢出合10:20〜今早出沢上部二俣15:00
7月20日 5:15〜右方ルンゼ大滝落口(終了点)8:05〜同左岸尾根〜今早出沢上部二俣10:40〜赤ッパ沢出合15:00
7月21日 5:40〜一ノ俣越〜一ノ俣沢橋8:50