東北・森吉山

2010年10月9日〜11日
L遠藤 徹・宮内幸男・渕上麻衣子・須藤功・佐藤千衣子
記録=遠藤 徹

 はるばる、秋田まで行って、また雨にたたられた。どうも今年の東北とは相性が悪い。7月の焼石、9月の虎毛に続いて雨の東北に泣かされ続けている。聞けば須藤さんも盆休みは東北で雨三昧と聞く。せっかくの3連休が雨だと、なんだかとっても損をしたような気になる。
 出かける前にナビで森吉山をセットしてみた。するとなんと秋田道の八郎潟からのアプローチを示したので驚いた。秋田道が延びてこのような検索結果になるのだろうが、これまでの盛岡から田沢湖を経由するルートと比べると距離は長いが確かに運転は楽だ(この理屈は帰りに実感することとなる)。
 しかし、もう若くない。東北には無尽蔵な魅力を感じるし、土日の1000円が続く限り通いたいが、いかんせん帰りの渋滞を考慮すると辛い。たまには奮発して新幹線に乗ってみたいと思う。若い頃は、今の俺位の年恰好のオッサンを見て、あの歳になったら贅沢な山旅を楽しめるようになれる、と思っていたが、それは錯覚であった。この歳になっても新幹線に乗れないのは、料金所を通過する度に表示される1000円少しの金額に歓喜するケチな根性を引きずっているためなのだろう。
 例によって金曜の晩はそそくさと残業に目処を付けて集合地へと向う。今回の面子は住所もバラバラなので変則的に北戸田集合とした。須藤さんのレガシィのアウトバックはまだ新車で、すこぶる乗り心地がよい。後部座席のスペースも割合ゆとりがあって長丁場には向いている。錦秋湖のSAに午前3時ころ到着し、テントを張って仮眠する。付近は栗林で早朝から栗拾いの観光客に起こされた。
 お天気は朝からどんより曇り空で今にも泣き出しそうな空に加え、猛暑の夏が今更恋しくなるほどの冷たい風が吹きすさんでいる。大曲で高速を降りた。高速代が1500円と表示されると、「ということは、1人300円ね」と後ろから千衣子さんが嬉しそうな声で話す。
 角館をかすめ、峠道を阿仁へと向う。長いアプローチを経てようやく安ノ滝駐車場へ到着する。連休ともあって、地元の人だろうか係員が誘導していた。その係員にこれから向う中ノ又川への登路を尋ねると「そんな道は知らない、ここから先には進めないから通り過ぎたのだろう」と秋田弁で返ってきた。我々は地図を出して盛んに説明を繰り返すが、部分的に訛りが聞き取れなく、かつ2人の係員は付近の案内に不慣れな様子であったため、制止されるかなと思いつつ「真っ直ぐ行ってみます」と伝えると、笑顔とともに「では、気をつけて」と思しき単語が返ってきた。
 駐車場から先の林道は俄然悪路になり、ゆるゆると登れば道標の立つ車止めに着く。すでに4台ほど停まっており少し戻った広場に車を置いた。ここからしっかりとした登山道に導かれてブナの美しい森を行く。当初の計画では中ノ又沢から赤水沢を下り、桃洞沢右俣から周遊するコースを予定していたが、今夜からの雨は避けられそうもなく、日帰りの荷物で中ノ又沢のナメだけを鑑賞しに行くことにした。佐渡杉への道と別れた先から沢型を拾って下降する。時折、小雨の降る中ではあるがナメと霞のかかる錦秋を楽しむ。所々、小さなトロや釜が現れ、水には浸かりたくないので微妙にヘツルところもあって楽しい。やがて安ノ滝の落口となり、1人ずつロープで確保しながら落口から下を覗き込んだ。こんな天気なのに観光客が随分出ている。手を振るが無反応なのは我々に気が付かないのだろうか。それとも自殺志願者だと思われ見て見ない振りをしていたのだろうか。桃洞杉からの一般道を帰路に取り、短時間で車へと戻った。
 時間は押し気味ではあったが折角だからと今度は観光客と共に遊歩道を往復し下から見物した。下から正統に仰ぎ見る安ノ滝は確かに優雅で立派な滝であった。この日は須藤さんの案内で打当温泉で汗を流してから「親子ふれあいキャンプ場」まで移動した。夜は本降りとなり、沢で泊まらなくて良かったとつくづく安堵する。
 翌日も天気は期待できず、野生鳥獣センターに車を止め、九階ノ滝と桃洞滝を往復してきた。様沢にかかる九階ノ滝は既に観光地に近い状態で、赤水沢からのアプローチも、取り付きの枝沢さえ読図を間違えなければ後は明瞭だ。滝見台とでも呼びたくなるような刈り払いが尾根上にあつらえられていた。ここからは遠望になるが素晴らしい眺めである。私も一時は真剣に直登を夢見ていたが、ボルト連打か5.13クライマーを連れてこなければ難しいのではないだろうか。宮内さんから秋田の舘岡さんが試登したと聞いたけれど、なるほど元浦和浪漫の心意気が感じられる話だ。赤水沢に戻り、今回の面子の中で唯一、洞桃滝を見たことがないマイちゃんのために洞桃滝を目指した。


写真は、九階ノ滝(左)と洞桃滝
 森吉山を巡るハイキングコースについて感じるのだが、やや初心者への配慮が足りない場所があるように思う。中ノ又沢側から洞桃沢の源流域に新しく整備されたルートや赤水沢界隈など、軽いトレッキング気分で入山すると随所に危険な場所が隠れているように思う。赤水沢から玉川温泉に抜けるコースなどを、あたかも一般向き+α程度に案内されているようだが、ここは完全に沢登りの世界で、経験のないハイカーだけで計画するにはリスクがある。なんでもない浅いナメの廊下をなす赤水沢の下部ではあるけれど、増水したら対岸に渡れないばかりかスラブに囲まれて避難もままならない地形である。
  この日も結局、同じキャンプ場に泊まり、翌朝、杣温泉で汗もかかない体を流し帰路についた。八郎潟を昼過ぎに乗り、自宅には深夜12時に着いた。秋の行楽シーズンとあって、東北道は70キロ渋滞であった。