北アルプス・平湯〜輝山スキー行

2011年2月19日〜20日
遠藤 徹/鈴木孝昇・佐貫悦子(童人トマの風)
記:遠藤 徹

 しばらく極寒が続き、雪国に住む人達には叱られてしまうけれど、久方ぶりの深雪が期待できそうな今冬であった。頸城や信越方面に食指が動いたけれど積雪量の多い所だとやみくもにラッセル地獄になるだろうと、昨年の計画倒れに終わっていた北ア、乗鞍の四つ岳北面を計画した。メンバーは麻衣ちゃんが行けなくなりトマの鈴木さんと佐貫さんの3人である。ところが出発直前の2月17日未明から翌18日にかけて、全国的に暖かい雨が降った。さんざん降った。嫌がらせのように降った。佐貫さんは「あんなに暖かいのだから2000mを越えても雨だろう」と話す。つくづく山スキーは水ものだと痛感する。後から思えばこの時点で計画を変更してもよかったのか。
 前夜、沢渡で仮眠し朝を迎えたが平湯を訪れるまでもなく、雪質は最悪のコンディションであることが判る。3人で相談した結果、四つ岳は諦めることにした。計画を縮小し平湯峠の北にある輝山(てらしやま)を往復した。平湯トンネルの入り口にある駐車場(たぶんチェーンを付けたり外したりするスペース)に鈴木さんの車を停め、平湯峠への林道に沿ってシール登行を始めた。林道のカーブする所では尾根筋をショートカットする。ほどなく先行する2人パーティに追いついた。彼らはスノーボードを背負っており、聞けば我々と同じルートだと言う。2時間弱で平湯峠に着く。雪質は悪いが天気はすこぶる良い。ここからしばらくは気持ちの良いオープンバーンが続くが、送電線の鉄塔を越えると突然の樹林帯となる。夏道のない山なのだが積雪期には人が入るのだろうか、赤布が随所に確認され、迷うことがなさそうだ。一汗かくと山頂近くの展望の良いピークに到着し槍ヶ岳や穂高の懐かしい勇姿を眺めた。こちら側からだとひときわ笠ヶ岳が美しい。帰りはやはり下るだけだった。日陰に入ればと少しは期待したものの、私の低レベルな技量ではターンすらままならない。平湯峠に出る手前のオープンバーンだけ気持ちよく滑ることができた。
 のんびり平湯峠で寛いでいると、こんなことならワインでも担ぎ上げてくればよかったと悔やまれる。
 この晩。悪雪に閉口した我々は、明日の予定も立たないまま平湯の山中でテントを張り、くだを巻いて飲んでいた。そこへ「平湯大滝結氷まつり」だそうで、それはもう例えようのないミスマッチでロマンチックな出来事が始まった。花火大会である。ヒュ〜 とどーん。ぱちぱちぱちぱち。3人はあんぐり口をあけ、呆然と眺めてから、まるで子供のように喜んだのである。

写真上:なつかしの槍穂遠望/写真下:平湯上のオープンバーン