GW紀伊半島の沢旅〈序〉

2011年4月29日〜5月5日
須藤功・遠藤徹・松倉淳
記:遠藤 徹

 我々、無知なる関東の沢屋には南紀の沢と聞いたら、紀伊半島の鈴鹿山脈以南の全エリアにわたる山々を指すものと思い勝ちである。どこからかお前だけよと聞こえてきそうだが、いずれにせよ五十歩百歩の見識に違いあるまい。紀伊半島のエリア区分は大別すると北から台高、大峰、南紀と分類される。台高は百名山の大台ヶ原を中心とした巨瀑とかつての景勝大杉谷(今は通行止め)に見る渓谷美が有名である。大峰は十津川と北山川に挟まれた中心的な山塊で、著名な池郷川や芦廼瀬川や立合川などが君臨する。南紀は最も南に位置し黒蔵谷を除けば聞きなれない沢名ばかりだが、ナメと優美な大滝が無尽蔵に眠っている魅力的な山域である。紀伊半島の地図を広げて眺めてみると、圧倒的な存在感で熊野川が流れている。中流以降を北山川と十津川に分け、集水面積は台高、大峰、南紀の全てのエリアに及ぶ。まさに紀伊半島の山々は熊野の山々でもある。また紀伊半島には山と海と川しかないと言っても過言ではないくらいだ。どこの海岸線も海に迫り出すような山を背負っているので昔から良港に恵まれなかったと聞く。この地域が木材資源に活路を見出すことは自明の理である。熊野川、古座川、日置川など主要河川は古より人々にとって生活の糧を担う重要な役目を果たしていたのだろう。
 計画は4つのブロックに分けて進めた。@台高堂倉谷、A大峰滝川または前鬼川、B南紀栂谷、C南紀立間戸谷である。このエリアは1週間に10日雨が降ると言われているだけあって、そう容易く計画通りには行かない。結果として運良く休養日に雨が降りAを除いて踏査できたことは満足のできる成果だと言えよう。
 出発の前日に松倉から「四日市に急な出張となって前夜東京には戻れません」と電話が入った。渋滞する東名高速の運転が嫌でワザと入れた出張かもしれない? 4月28日、私と須藤さんが町田駅で待ち合わせ、22時過ぎに東名に乗った。やはり大型連休とあって四日市の松倉が泊まる駅前のビジネスホテルには4月29日の明け方に着いた。松倉を叩き起こし車に乗せる。長い長い旅路の果てに、大台ヶ原の駐車場に着いたのは9時過ぎであった。


写真は、堂倉谷・奥七ツ釜